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カスタマーサクセス

CS立ち上げ経験者に聞く、カスタマーサクセス組織構築のポイント

著者名 TimeSkip

カスタマーサクセスとは、自社の商品やサービスを顧客が効果的に活用できるようサポートする職種です。顧客の解約率を減らし、継続的な利用を促進するため、事業の収益に大きな影響を与える重要な役割を担っています。

とくにサブスクリプション型モデルのSaaS事業においては、カスタマーサクセスの取り組みが「LTV(顧客生涯価値)」の向上に大きく影響します。

しかし、現場では「顧客と良好な関係の築き方がわからない」「顧客数が増えたのに、LTV向上につながらない」など、さまざまな問題に直面しがちではないでしょうか。

TimeSkip(タイムスキップ)では、カスタマーサクセス組織を標準化しLTVを向上させるサービスを提供しています。お気軽にご相談ください。
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今回は、SaaS事業のカスタマーサクセス組織を0から構築してLTVを向上させた経験がありTimeSkipのコンサルタントとして活躍中の木村さんをお呼びし、LTVを最大化させる取り組みについて聞きました。

木村さんのプロフィール

2015年に株式会社ラクスに入社し、請求書発行サービスのカスタマーサクセス部門の立ち上げ。2020年よりTalknote株式会社で、カスタマーサクセスやマーケ領域など全部門を横断して事業推進を行う。TimeSkipでは、カスタマーサクセスを標準化しLTVを高めるコンサルティングを実施。


カスタマーサクセスは、事業フェーズごとに起こりがちな問題と課題がある

まずは、木村さんの経験や現在のお仕事を簡単に教えてください。

木村さん
私は2015年にバックオフィス系のSaaSサービスを提供し、株式会社ラクスに入社しました。請求書発行サービスの立ち上げ時に、カスタマーサクセスチームの設立を経験しています。製品の企画も担当し、事業のフェーズ「0から1」「1から10」「10から100」を経験しました。

その後、社内コミュニケーションツールを提供するTalknote株式会社で、カスタマーサクセスだけではなく、全部門を横断して事業推進を行いました。

現在、TimeSkipではカスタマーサクセス事業立ち上げの経験を活かしてコンサルタントとして活動しております。

―カスタマーサクセスの現場では、どのような問題や課題が起きるのでしょうか。

木村さん
カスタマーサクセスは「お客さまがサービスを使いこなせる状態になること」がゴールです。ただ、事業が成長して顧客数が増えてフェーズが上がるにつれて、直面する課題も変化していきます。

そのため、まずは事業フェーズごとに発生する課題への対応に取り組みました。

【カスタマーサクセスの事業フェーズごとの課題】
・「0から1」フェーズ:オンボーディングのフロー構築
・「1から10」フェーズ:カスタマーサクセスの属人化の防止
・「10から100」フェーズ:業務効率化(顧客対応時間の短縮)

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事業立ち上げ時はオンボーディングがカギ。コストをかけてでもお客さまに会っていた

まず、0→1の事業フェーズでは、何に取り組みましたか。

木村さん
株式会社ラクスでは、最初のカスタマーサクセス担当者として参画しました。当時は仮説を現場で検証して、成功事例を作れるようにさまざまな方法を試しました。

プロダクトの機能提供のみでは課題解決できないことも多いため、運用方法のフォローや、お客さまの課題に合わせた利用方法を提案しました。

SaaS事業の初期フェーズでは、提供するプロダクトの機能は完璧ではないことが多く、、少しずつ機能が増えていくのが特徴です。そのため、プロダクトとお客さまの課題解決のギャップを「CS担当のサポート」で補う必要がありました。

お客さまとのコミュニケーションはどうしてましたか。

木村さん
お客さまのもとに直接訪問するか、電話が多かったですね。

メールよりも直接会うことで、悩みや疑問など細かい情報が得られます。初期フェーズでは、コストをかけてでも「お客さまのことを深く理解して、プロダクトを利用できるようにすること」を重視していました。

初期フェーズでは、どのような課題が生じやすいのでしょうか。

木村さん
0から業務を考えて進められる人が社内にいない場合「難しい」と感じて大変だという気持ちになってしまいがちかなと思います。

壁に直面したら、どのように乗り越えるとよいのでしょうか。

木村さん
初期フェーズはデータがほとんどないため、さまざまな方法を試して、失敗と成功事例を蓄積することが重要ですね。PDCAサイクルを早く回すことで、少しずつ解決していくはずです。

また、社内にカスタマーサクセスや事業立ち上げの経験者がいない場合、他社でCS担当をされている方など、経験がある方に意見を聞くことも、早く課題解決に導けるはずなので有益だと思います。


事業拡大期で求められるのが「誰でも実行可能なフローの構築」と「売上高総利益」

事業が拡大する1から10のフェーズでは、どのような取り組みが求められますか。

このフェーズでは、初期に構築したカスタマーサクセスのフローを「誰でも実行できる形にすること」が求められます。

SaaS事業のプロダクトは、機能拡張に合わせてカスタマーサクセスのフローも改善する必要があります。初期のフローは、担当者にとって独自のやり方が入ることも多いため「業務の属人化」が発生してしまいがちなんです。

また、このフェーズでは「カスタマーサクセスチームの人数を一気に増やさないこと」も、非常に重要になってきます。

初期はお客さまに時間をかけてサポートしますが、受注数が増加すればカスタマーサクセスも増やさなければ対応できません。しかし、増員はコストも増大するため、「生産性を上げ原価を下げる」という考え方にシフトすることが求められるのです。

どう進めていくのがよいでしょうか。

木村さん
お客さまのフォローの際、時間をかけるポイントの見定めが必要になります。同時に、最適なフローへの改善が求められます。


フロー構築のポイントは「役割の明確化」と「オンボーディング期間の短期化」

フローを構築するポイントを、くわしく教えてください。

フロー構築の重要なポイントは、お客さまとカスタマーサクセス担当者の「役割の明確化」と「オンボーディング期間の短期化」です。

カスタマーサクセス担当者は、通常一人一社担当しますが、役割が明確でなければ、お客さまから「全部やってもらえる」と誤解されてしまうことがあるんです。

そのため、円滑なオンボーディングの短期化には、最初に役割とフローの進め方や期限、お互いのタスクを明確に伝えて、自社が主導することが重要ですね。

オンボーディング期間の短期化について、どのように進めて行ったのでしょうか。

木村さん
2~3社ほどフローやオンボーディングを試した後、フローを確定し、チームに展開させました。半年で成果を出すようにしていましたね。

フロー構築の成功ポイントは何だと思いますか。

木村さん
オンボーディングの短期化に加えて「誰でも同じ方法でオンボーディングを実施できるようにしたこと」です。

もちろん、すべての企業に当てはまるわけではありませんが、事業の利益とフローの確定を意識して、短期間でオンボーディングを完了させることがポイントだと思います。

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事業拡大期のカスタマーサクセス組織化のポイントと注意点

拡大フェーズで起こりがちな、組織の問題と原因を教えてください。

木村さん
カスタマーサクセスの人数が増える際に起こりがちな問題が「業務の属人化」です。原因の1つには、どうしてもメンバーの増員はお客さまが増えてからになりがちなため、目の前の顧客対応に追われカスタマーサクセスの業務フローを整理する時間がとりずらいという事があります。

また、カスタマーサクセスはお客さまと直面するため、困っていたら「何でも解決してあげたい」という気持ちから、個々の判断で進めがちになります。

すると、引き継ぎが難しくなったり、担当者指名を避けられなくなったりするなど、属人化の原因になってしまうんです。

属人化の問題を、どのように乗り越えたのでしょうか。

木村さん
さまざま方法を試しながら、誰でも同じ方法で実行できるように、フローの進め方や内容を細かく決めて、型をつくり管理していましたね。

それと同時に、お客さまとの認識合わせをしていました。

チームメンバーにフローや手順を伝える際、どのような工夫をしていましたか。

木村さん
まずは起きている課題をチーム内で共有し、やり方を変える必要性を理解したうえで「やり方を変えていきましょう」と推進していきました。すると、メンバーから納得してもらいやすく、スムーズに進められました。

早くから活躍される方の特徴はありますか。

木村さん
過去のやり方に縛られず、新たな施策やフローを積極的に取り入れられる人は向いていると思います。独り立ちも早い印象ですね。

カスタマーサクセスは、プロダクトの機能追加や新たなフローの構築など、常に変化して対応する必要があるからです。

LTV向上には業務効率化と案件の並行処理が有効。常にデータを収集して分析する

カスタマーサクセスのフロー構築が完了し、オンボーディングの期間が確定した次の事業フェーズで重要な取り組みは何でしょうか。

木村さん
次のステップは「顧客対応の時間短縮」です。このフェーズでは、一定の期間でオンボーディングはできるけど、時間がかかるという問題が発生しがちだからです。

そのため「業務の効率化と仕組み化」が重要になります。

LTVの構成要素として「売上高総利益率」があります。カスタマーサクセス部門って原価に計上されるため、カスタマーサクセスの人数が多いほど利益が逼迫していくのです。

そのため、少ない人数で多くのお客さまに対応することが、売上高総利益率とLTVを高めるカギとなります。たとえば、2ヶ月間でオンボーディングしたとしても、毎日その一社だけ対応していたら、ほかの顧客が持てませんよね。

顧客対応の時間を短くし、業務を効率化することで、複数の顧客に対応できる状態が重要になるのです。

業務の効率化と仕組み化の課題は、どのように解消しましたか。

木村さん
まずは、データを収集して「誰がどの業務に何時間をかけているか」を把握します。お客さまごとにかかる時間の可視化です。

カスタマーサクセスの担当者ごとに業務スピードを分析して、業務スピードが早い人の方法を業務フローに取り込みました。

さらに、お客さまのフェーズ(オンボーディング導入中、導入後など)で区切ったり、お客さまの利用状況や設定内容を見たりするなど、さまざまな要素で分析してデータを掘り下げていきました。

そして、時間削減できる業務を洗い出し、業務の整理や仕組みづくりを試して、時間の削減効果がある施策を取り入れましたね。

当時はどのような方法で、データを収集していたのでしょうか。

木村さん
当時は販売管理システムを使って管理していましたが、初期はExcelにデータを手入力し、集計していました。情報が蓄積できればいいので、Excelでもスプレッドシートでも構わないと思います。

【ポイント】事業拡大後のフェーズでは、カスタマーサクセスの増員を遅らせ、オンボーディングの導入期間と顧客対応時間の短縮を目指す。そして、一人で複数の案件を処理できるよう生産性を高めて、LTVの向上につなげていくことが大切

木村さん
業務効率化は事業やプロダクトの成長フェーズによって、さまざまな課題や優先順位があります。カスタマーサクセスって、目の前の顧客対応に追われている状態なので、自社の課題を俯瞰するのが難しいことも多いんです。

そのような場合は、外部の専門家やコンサルタントに相談するのもよいと思います。

カスタマーサクセスの楽しさは、プロダクトの成長と共に変化できること

―最後に、課題に直面している方に、木村さんからメッセージをお願いします。

木村さん
SaaS事業のカスタマーサクセスは、プロダクトが未成熟の段階からお客さまをフォローする仕事です。さらに、プロダクトが成長するにつれて、適切なフローや施策も変わるため、常に改善が求められます。

でも、それこそがカスタマーサクセスのおもしろさだと私は思っています。

たしかに難しいお仕事かとも思いますが、トライアンドエラーを繰り返し、PDCAを回して1本の事業をつくっていくのは大変楽しい仕事です。

お客さまがサービスを活用して効果を実感し、成功に導く過程を楽しみながら進めていただければと思います。

本記事のまとめ

・事業フェーズごとの課題を理解し対処することが重要

・初期の事業フェーズは、顧客を深く理解し、素早くPDCAを回しプロダクトの機能不足をサポート

・効果的なオンボーディングのフローを構築することが重要

・フロー構築の成功のカギは、顧客とカスタマーサクセスの役割を明確にし、オンボーディングの期間を短縮することが有効

・事業拡大のフェーズでは、誰でも実行可能なフローを構築し売上高総利益にも着目する

・LTVの向上には、業務データを収集・分析し、顧客対応の時間を短縮させることが重要

・カスタマーサクセス組織構築の主な課題は、属人化の防止

この記事の編集者:上野さおり

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