SaaSビジネスでは、様々なKPIを活用して施策の立案、業務改善などを行うことが特に重要とされています。
この記事では、KPI管理の重要指標となる主要KPIについて解説し、全体像の把握に役立つKPIツリーの作り方について詳しく解説していきます。記事後半部分では、弊社が実際に活用しているKPIを紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
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なぜSaaSビジネスでKPI管理が重要なのか
SaaSビジネスにKPI管理が重要となる理由は、4つあげられます。
- 売上予測を元にビジネスを拡大させるため
- 商品・サービスの改善に生かすため
- 分業化された営業活動の改善に生かすため
- 立ち上げ期でも出資してもらいやすくなるため
売上予測を元にビジネスを拡大させるため
SaaSビジネスは、継続利用がベースのサブスクリプション形式のため、顧客の継続率や解約率を元に将来の売上を予測しやすいビジネスモデルです。
売上予測の精度が高ければ、目標達成に向けた対策を早めに打てたり、今後の事業展開の方向性の検討がしやすくビジネスの拡大へとつなげていくことが可能です。
商品・サービスの改善に生かすため
SaaSビジネスの仕組みは、サブスクリプション形式であり顧客が継続利用することによって投資したコストを回収できるしくみです。顧客に継続して利用してもらうためには、顧客満足度を高めるために常に商品・サービスの改善を行う必要があります。
SaaSビジネスはweb上のサービスとして、顧客の行動をデータにより可視化できます。顧客の心理や行動を表すデータをKPIとして管理することによって改善策を見つけることができます。
さらに、SaaSビジネスはクラウド上でサービスを提供しているため、比較的修正や改善もしやすいといった特徴もあります。
重要なことは、KPIを管理して顧客の満足度やサービスの質を確認し、継続利用につなげる改善を常に行うことです。
また、SaaSビジネスの立ち上げ期では、PMF(プロダクトマーケットフィット)の達成まで改善の積み重ねが必要です。PMFとは、事業で扱う商品・サービスが特定の市場に適合している状態のことをあらわします。
PMFを達成するためには、ユーザー動向をみながら素早くサービスの改善を何度も試みる必要があります。売上が上がる前であってもKPI管理によって、常に現状と目標のギャップを把握して意思決定し、行動に移せる状況を作っておきましょう。
分業化された営業活動の改善に生かすため
SaaSビジネスの営業活動はTHE MODEL型と言われる分業化が進んでいます。THE MODEL型では、属人化を防いで行動を数値化し、営業効率を最大化するために次のように営業プロセスを分けて各部門が連携する体制をとっています。
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
営業プロセスの分業化において重要なことは、部門間の連携です。KPIを部門間の共通言語とすることでスムーズな連携や課題の発見、解決がしやすくなります。
立ち上げ期でも出資してもらいやすくなるため
SaaSビジネスのKPI管理が重要な理由は、立ち上げ期の出資を促せる点にあります。収益の上がっていない立ち上げ期のSaaS企業だとしても、リードの獲得率などから売上の見込みを立てることが可能です。
売上の見込みが立てられれば、事業内容を評価されやすくなるでしょう。その結果、投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けられる可能性が高くなります。
主要KPIの種類
SaaSビジネスでは、どのようなKPIが活用されているのでしょうか。ここでは、SaaSビジネスで活用されている代表的なKPIを紹介します。これらを参考に自社のサービスや体制に適したKPIを設定しましょう。
KPIは大きく分類すると、成長性、効率性、継続性に分けられます。
成長性
SaaSビジネスの成長性をあらわすKPIは、月間経常や年間経常などの収益を目標にします。一般的な事業における指標です。成長性をあらわす代表的なKPIは、MRRやARRなどがあります。これらのKPIを基準に平均値や比率を算出します。
1.MRR(Monthly Recurring Revenue)
SaaSビジネスにおける売上は、単月のみ発生するスポット売上と継続的に発生するストック売上(月間経常収益)から構成されます。このストック売上はMRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)と呼ばれ、このMRRを12倍したものをARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)と呼びます。
売上の大部分はこのストック売上から構成されるため、事業推進のため毎月このMRRをより多く積上げていくための取り組みを重ねる必要があります。
【計算式】
- 一カ月ごとの契約の場合:月額利用料金×顧客数
- 半年ごとの契約の場合:半年間利用料金÷6×顧客数
- 一年間ごとの契約の場合:年額利用料金÷12×顧客数
※MRRの成長率. 期末MRR÷期首MRR-1
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
「SaaSの売上継続率(NRR)とは?目安と改善方法についても詳しく解説」
2.ARR(Annual Recurring Revenue)
前述の通りARRは年間経常収益で、MRRを年間にしたものです。
SaaSビジネスのスタートアップの場合、ARR成長率は設立から毎年3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と収益を上げていき、5年で72倍の収益拡大を目指します。これをT2D3(Triple、 Triple、 Double、 Double、 Double)といいます。
スタートアップの場合、「ARR成長率(%)+営業利益率(%)>40%」を目指すのが良いとされています。(40%ルール)
【計算式】
MRR×12
※ARR成長率. 期末ARR÷期首ARR-1
Next SaaS Media Primaryが2024年3月に最新のARRランキングを公表しました。結果は以下の通りとなりました。
以下の表を見ると国内SaaS企業では、ARRはラクス社の324億がトップとなっています。
引用:【2024年3月更新】上場SaaS KPI公表の全て|Next SaaS Media Primary | 運営 早船 明夫
3.CMRR(Committed MRR)
CMRRとは一年契約などの長期契約を結んでいるため将来的な収益が確約されているMRRのことです。
4.Quick Ratio
Quick Ratioとは、当座比率とも言い、一定期間内に増加したMRRと失ったMRRの比率です。計算式は次のようになり、4を目安とするのが一般的です。
【計算式】
(New MRR+Expansion MRR)÷(Churn MRR+Contraction MRR)
- New MRR:新規顧客の増加によって得られたMRR
- Expansion MRR:既存顧客のアップセル・クロスセルによって増加したMRR
- Churn MRR:既存顧客の解約によって失われたMRR
5.ARPA(Avarage Revenue Per Account)
ARPAとは1アカウントあたりの平均収益を表します。
【計算式】
MRR÷アカウント数
6.ASP(Average Sales Price)
ASPは新規顧客一人あたりの平均収益を表します。
【計算式】
(ある期間の)MRR÷(その期間内の)新規獲得顧客数
効率性
SaaSビジネスの効率性は、顧客行動を基準に割合を算出するKPIです。たとえば、顧客転換率をあらわすCVR(Conversion Rate)や顧客生涯価値をあらわすLTV(Life Time Value)があげられます。
1.CVR(Conversion Rate)
顧客獲得の効率性を見極めるための指標のCVRは、「顧客転換率」を意味し、見込み客から有料新規顧客になった(コンバージョンした)割合を示します。CACから逆算することが目安です。
【計算式】
CVR=CV数÷サイトの訪問者数(広告のクリック数)など
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「SaaSビジネスの受注率の平均は?受注率低下の要因や改善策についても解説」
「インサイドセールスの商談化率の平均は?低下の要因や改善策についても解説」
2.LTV(Life Time Value)
LTVは、顧客生涯価値を意味し、1社のユーザーが取引開始から終了までどのくらいの収益をもたらしたか測るための指標です。
LTVは、平均月額単価 × 平均利用期間 × 売上総利益率 で求めます。そのため、売上総利益率が高ければLTVも高くなり、1契約を獲得するのに使える費用を多くできるため、新規受注が取りやすくなります。つまりLTVが伸ばせないと新規販売件数が伸ばせなくなるとも言えるため非常に重要な指標となります。
【計算式】
- 平均月額単価 × 平均利用期間 × 売上総利益率
- ARPA×平均継続期間
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「【徹底解説】SaaS企業のLTVとCAC、ユニットエコノミクスの計算方法」
3.CAC(Customer Acquisition Cost)
顧客獲得単価のことをあらわすCACは、新規顧客1社あたり、どのくらいのコストがかかったか算出する指標です。
一般的にCACはLTVの1/3程度に抑える必要があります。LTVが伸びなければCACは事業のフェーズにもよりますが、経験則的に上限に到達するまであがっていくため、新規販売件数を伸ばすのがむつかしくなていきます。
【計算式】
顧客獲得にかかった総コスト÷新規獲得顧客数
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「SaaSビジネスを成功させるための広告とは?広告の種類や使い分け・運用改善ポイントを含めて解説」
4.CAC Payback Periods
どのくらいの期間でコストを回収できたか、顧客獲得コスト回収期間をあらわす指標です。6カ月〜12か月が目安になります。
【計算式】
CAC÷(ARPA×粗利率)
5.ユニットエコノミクス(Unit Economics)
ユニットエコノミクスは、顧客一人あたりの採算性(収益性)を指す指標で、顧客獲得にかかった総コストが妥当かどうか判断するために用いられます。3以上にしていくことが目安となります。言い方を変えると1顧客獲得にLTVの1/3程度までコストをかけても良いとも言えます。
【計算式】
LTV÷CAC
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「SaaSビジネスのコスト構造ってどう考える?原価率・販管費率の改善方法も含めて解説」
6.バーンレート(Burn Rate)
バーンレートは、資金燃焼率という意味で、一カ月あたりにかかったコストのことです。以下2つの指標があります。
- Gross Burn Rate:一カ月あたりの総コスト
- Net Burn Rate:総コストから収入を差し引いたコスト
一般的にはNet Burn Rateを重視して事業の効率性を判断します。目安は、次のとおりです。
- Runwayと手元資金から逆算
- SaaSは販管費率が大きくなりがち(60%以下を目指す)
7.ランウェイ(Runway)
ランウェイは、猶予期間のことで、資金が底をつくまでの期間をあらわします。最低でも1年間を目安に確保する必要があります。一般的な企業は18ヶ月が理想ですが、起業したてのスタートアップ企業には難しいため最初は12ヶ月の確保を最低ラインとして、業績や事業拡大に合わせて調整していきましょう。
【計算式】
手元の資金÷Burn Rate
当社は資金調達のご相談にも応じています。「アイデアはあるけど手元資金がない」ので走り出せないという企業はお気軽にご相談ください。
継続性
継続性の指標は、SaaSビジネスの特徴となる顧客の継続維持や解約に関するKPIです。具体的には、Churn Rate(解約率)やCRR(Customer Retention Rate:顧客維持率)などがあります。
1.チャーンレート(Churn Rate)
チャーンレートは、解約率のことを指し、SaaSビジネスでは必ず測定する指標です。SaaS事業の対象とする顧客が、中小企業で3%〜7%、中堅企業で1%〜2%、大企業で0.5%〜1%が目安になります。また、「Customer Churn Rate(顧客件数ベース)」と「Revenue Churn Rate(レベニューベース)」の2種類あります。
SaaSビジネスにおいて解約率を改善させることはLTVへの影響の大きさを考えても最重要です。
顧客件数ベースの解約率は、解約件数を総契約数で割ったもので、レベニューベースは解約によって積み下がったMRRを全体のMRRで割ったものです。
どちらの解約率も重要なのですが、特に重要なのは件数ベースの解約率です。上場SaaS企業で公表されている場合も件数ベースの解約率が多くなっています。
一般に単価と解約率については正の相関があり、月額単価が高い顧客層の解約率は、低い顧客層の解約率よりも低くなります。そのため基本的にはレベニューベースの解約率よりも件数ベースの解約率のほう高い数字になります。つまり、件数ベースの解約率を指標として追跡ししっかりと低減させることが重要となります。
また、件数ベースでの解約率は逆数にすることで平均利用期間(1 / 件数ベース解約率)が求められるため、LTVに強く影響するのはレベニューベースではなく件数ベースだからです。
【計算式】
Customer Churn Rate
(解約ユーザー数)÷総ユーザー数
Gross Revenue Churn Rate
(Churn MRR+Contraction MRR)÷前期末時点のMRR
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「SaaS業界におけるチャーンレート(解約率)の平均と目安とは?計算方法や改善策も解説」
2.CRR(Customer Retention Rate)
「顧客維持率」を指し、どのくらいのユーザーを維持できているか把握する指標です。
【計算式】
前期から継続しているユーザー数÷前期末時点での総ユーザー数
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「カスタマーサクセスの立ち上げ手順と組織モデルについて詳しく解説」
3.NRR(Net Revenue Retention)
「売上継続率」を指す既存顧客の収益の増減を測る指標です。100%を超えていると安定した収益が見込めるため、100〜115%程度を目標にします。
【計算式】
(期首の合計MRR+Expansion MRR−Churn MRR−Contraction MRR)÷期首の合計MRR
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「SaaSの売上継続率(NRR)とは?目安と改善方法についても詳しく解説」
4.AU(Active User)
実際にサービスを利用しているユーザー数をあらわします。一日単位の「DAU(Daily Active User)」と、一カ月あたりの「MAU(Monthly Active User)」があり、ユーザーの利用頻度を求めることが可能です。
【計算式】
ユーザーの平均利用頻度
DAU÷MAU
5.平均継続期間
ユーザーの平均継続期間のことです。目標とするLTVから逆算して目標を設定します。
【計算式】
1÷Net Revenue Churn Rate
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「【徹底解説】SaaS企業のLTVとCAC、ユニットエコノミクスの計算方法」
6.NPS(Net Promoter Sore)
NPSは、顧客推奨度のことで、ユーザーの推奨度からロイヤルティを判断する指標です。
「あなたはこのサービスを、他者にどのくらい勧めたいですか?」という質問に対し、0〜10の11段階で評価してもらい、回答の点数に応じて以下のように分類します。
- 9点、10点:推奨者
- 7点、8点:中立者
- 0~6点:批判者
目安は、プラスの数値であれば、推奨者が多いということになり、顧客ロイヤルティが高い状態と判断できます。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS®、そしてNPS®関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標またはサービスマークです。
【計算式】
推奨者の割合-批判者の割合
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「カスタマーサクセスの立ち上げ手順と組織モデルについて詳しく解説」
7.NRS(Net Repeater Score)
NRSは、顧客継続度のことです。引き続きサービスを利用していきたいと感じているユーザーの割合をあらわします。「あなたはこのサービスを一年後も利用したいですか?」という質問に、1〜5で評価してもらい、回答の点数に応じて以下のように分類します。
- 5点:リピーター
- 4点:中立者
- 0~3点:離反リスク者
目安は、プラスになるのが望ましい指標です。
【計算式】
リピーターの割合-離反リスク者の割合
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「カスタマーサクセスの立ち上げ手順と組織モデルについて詳しく解説」
8.ヘルススコア
「顧客が自社のプロダクト利用を継続するかどうかを測る指標」のことです。主にカスタマーサクセスを運用する際に用いられます。
【計算式】
主に「顧客関連情報」・「利用状況データ」・「顧客満足度」の3つを用いて独自に指標を決める
【参考記事】
次の記事でも詳しく解説しているので、お役立てください。
「カスタマーサクセスで直面する課題と解決策は?LTVやヘルススコアの考え方を含めて解説」
9.RFV
RFVは、以下3つの指標の頭文字を取ったものです。
- Recency(直近の利用状況)
- Frequency(利用頻度)
- Volume(利用量)
サービスを契約していても、RFVスコアが低ければ、顧客は価値を感じているとはいえいないため、スコアに応じたアプローチ方法を検討するために活用します。
【計算式】
- Recencyスコア=現時点の日付-最終利用日(ymd関数を利用)
- Frequencyスコア=利用日数÷サービスの利用期間
- Volumeスコア=利用時間÷サービスの利用期間
営業部門ごとに使われる指標
前項で紹介したKPIは、事業性評価を目的として他社との比較の際に有効です。これらのKPIに加えて、営業部門ごとで設定されるKPIや担当者ごとに設定されるKPIとしては次のようなものがあります。KPIは、自社のサービスや組織体制に合うものを設定しましょう。
部門 | KPIの例 |
---|---|
マーケティング(Marketing) | 流入経路ごとのリード数・有効リード数・有効化率・商談数・商談化率 |
インサイドセールス (IS) | 接続数・接続率・有効会話数・有効会話率・商談数・商談化率・有効商談化率・契約数・金額・初回ロスト率 |
フィールドセールス (FS) | 契約数・金額・受注率・訪問件数・提案回数・提案率・顧客単価・解約件数・ARR・MRR |
カスタマーサクセス (CS) | アップセル数・クロスセル・金額・解約率・クロスセル数・金額・オンボーディング期間・オンボーディング完了率・継続期間 |
プロセスごとのKPIについてはこちらの記事もご参照ください。
「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」
KPIツリーとは
KPIツリーは、KGI達成のために必要な要因(KPI)をロジックツリーで分解したものです。KPIツリーは、KGIを構成する要素を因数分解し、施策を実行可能なレベルまで落とし込んでいるKPIのことを意味します。
KPIツリーを作るメリット
KPIツリーを作ることのメリットは、次の通りです。
- KGI達成に向けたプロセスが明確になる
- 先行指標で管理できる
- モチベーションアップ
- ボトルネックの発見、改善
KPIツリーの作成は、KGI達成に向けたプロセスの明確化が可能です。KPIは、細分化することで、いくつもの要素に分類できます。細分化されたKPI要素は、階層構造でつなぐことで、KPIプロセスを誰でも関係性を共通認識できるようになります。
また、KPIツリーを活用せずに単にKGIのみで管理している場合、結果が出るまで問題への対策がとれないことになります。その点、KPIツリーでプロセスを見える化して管理していれば結果が出る前の先行指標によって早期に問題に気付き、対策をとることができます。
さらに、KPIツリーは自分の行動がどう影響するかを階層構造から把握することが可能です。そのため、目先の目標から未来の目標まで「何を達成すればその先に行けるのか」が明確になります。常に現在地と目標を把握できる点がモチベーションアップにつながるでしょう。
KPIツリーのメリットは、目標だけではありません。ボトルネックの発見や改善に役立ちます。KPIツリーで階層構造に要素を細分化すると、プロセスの途中で非効率な工程も浮き彫りになってきます。
KPIツリーの事例
ここでKPIツリーの一例を紹介します。事業部全体のMRR(月次経常収益)をKGIとした場合、KPIツリーは次のようになります。
上の図のように、ツリー構造であらわすことで各部門がKGI達成に向けて「どう影響しているか」を可視化できます。
実際にKPIツリーの作成にあたっては、金額や割合などの単位を設定する必要があります。各媒体の施策については、KPIを極限まで分解することが重要です。
KPIツリーを作る時の注意点
KPIツリーの作成にあたっては、次の点に注意が必要です。
- 計測可能なKPIである
- 四則演算の形であらわせるKPIである
- これ以上分解ができないところまで分解(細分化)する
- 単位を入れる
- MECE(抜け漏れなく、重複なく)である
KPIは、隣接する要素同士が何らかの論理的な要因で関係性を持っていなければ成り立ちません。そのため、KPI要素は、計測可能であることが前提です。計測可能である共通言語は、定量的な数値で設定することが求められます。
また、数値指標は四則演算の計算式であらわせなければプロセスの整合性を保てなくなります。そのため、階層構造でつなぐKPI要素同士が計算のうえで成り立っているか確認が必要です。具体的には、最終目標となるKGIの数値目標が細分化されたKPI要素の計算で成り立っていれば計算上達成可能な目標と考えられるでしょう。
KPIツリーで細分化する際の注意点は、あいまいな要素を作らないことです。計測できないあいまいな要素を設定してしまうと、前後の要素まで不透明となって関係性を担保できなくなります。そのため、KPI要素はこれ以上分解ができないレベルまで細分化することが必要です。
KPIツリーで扱う要素は単位を入れることも忘れないようにしましょう。KGIで設定している数値目標が売上であるのに対して、KPIの単位が営業担当者の労働時間になっていた場合、要素をかけ合わせた単位の論理がかみ合わない状態になります。
ツリー作成で考えられるこれらの注意点は、MECEであるかチェックすることで整合性を担保できます。MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは、論理的思考の概念である「漏れなく、重複のない状態」を意味します。
ロジックツリー構造を意識したKPIツリーは、MECEでなければなりません。漏れや重複する項目があれば、論理が破綻してしまい、KGIに到達できなくなります。そのため、KPI要素は、四則演算のできる単位をそろえた数値で設定することが重要です。
まとめ
SaaSビジネスにおいてKPIを重要とする理由は、売上予測や商品・サービスの改善に生かすためです。また、KPIは営業プロセスを分業化して、部門間でデータを共有する指標としても重要な役割を果たします。結果的に誰もが共通認識できる論理的に成立する数値で作られたKPIツリーであれば、そのKPIから将来性を見通した出資を受けることが期待できます。
最後に、弊社で作成したKPI一覧を掲載します。ダウンロードできますので、自社のビジネスに適した項目を選び、実際に数値を当てはめて作成してみてはいかがでしょうか。
SaaS KPI一覧表
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弊社では、SaaSビジネスに関するあらゆる施策のコンサルティングを承っています。KPI作成について、素朴な疑問などございましたらお気軽にご相談ください。
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