昨今、業務の効率化や分業化のため非対面で訪問せずに営業する「インサイドセールス」が注目を浴びています。
しかし導入してみたものの「うまくいかない」「なかなか成果をあげられない」という悩みを抱えている企業も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、弊社のこれまでの経験を踏まえ、うまくいかないときに考えられる原因と十分に効果を発揮するための8つの対策方法を解説します。事前にインサイドセールスの役割や失敗してしまう要因を知り、準備をした上でインサイドセールスを業績の向上にお役立てください。
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目次
インサイドセールス導入のメリット
インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議ツールなどを使い、非対面で営業をおこなう営業スタイルやポジションをさします。会社や在宅で営業活動ができる上に、広告やセミナーなどで製品やサービスに興味を持ち、問い合わせをしてきた見込み顧客に対して、スピーディーに対応することが可能です。
インサイドセールスを導入すると、以下のメリットが得られます。
- 1日あたりの商談件数が増加する
- 顧客へのフォローアップに集中できる
- 営業活動を分業化して効率化できる
- 顧客の検討・購入タイミングを逃さない
- 顧客データを共有して顧客行動を分析できる
- 売上予測ができるため、営業戦略の見直しがしやすい
インサイドセールスは、営業先に出向く必要がないため、効率よく営業活動ができます。さらに顧客情報や対応履歴を共有することで、担当によって対応内容にばらつきが出たり、重複して対応したりすることを防げます。
インサイドセールスの導入には多くのメリットがあるものの、うまく運用できず成果につながっていないケースもあります。次の項目では、インサイドセールスがうまくいかない原因を解説します。
インサイドセールスがうまくいかない8つの原因
インサイドセールスを導入して失敗してしまう原因としては、以下があげられます。
- インサイドセールス導入の目的や役割が不明確
- インサイドセールスがテレアポになっている
- 適切なKPI設定ができていない
- 見込み客の数が不十分
- マーケティングやフィールドセールスとの情報共有・連携不足
- ツールがうまく使えていない
- 教育やノウハウの情報共有不足
- 全体の管理者がいない
インサイドセールスを導入する目的を社内で共有できていないと、情報共有や社内での連携がうまくできず、商談件数や売上向上につながりません。
インサイドセールスのメリットを享受するためには、うまくいかない原因を解決しましょう。それでは、失敗してしまう原因と解決方法を1つずつ紹介します。
【原因1】インサイドセールス導入の目的や役割が不明確
インサイドセールスの導入目的や、業務のすみ分けなど役割が明確になっていないと失敗につながりやすくなります。
たとえばインサイドセールスを取り入れるために、CRMやSFAなどのツールを導入したもののツールが社内で浸透しなかったり、部署間での業務の分業化ができなかったりすると、うまくいきません。
まずは、業務の効率化や見込み顧客の発掘などインサイドセールスを導入する目的を明らかにしましょう。目的を洗い出す際には、営業活動の全体像を見直し、マーケティングやフィールドセールスなど他部署との作業分担をしておきます。目的や役割が明確になったら、従業員に情報共有して足並みを揃えましょう。
【原因2】インサイドセールスがテレアポになっている
インサイドセールスの役割は、アポを取るだけではなく、見込み顧客を育てて信頼関係を築くことです。
インサイドセールスは近年導入され発展し始めたため、役割を電話やメールでのアポインターと認識しているケースも多く、フィールドセールスとの連携がうまくいかず失敗してしまうこともあります。
インサイドセールスを導入して運用していくためには、テレアポとの違いや、インサイドセールスの役割を認識しておくことが重要です。
インサイドセールスとテレアポの違い
インサイドセールスとテレアポは、役割や目的、KPIなどに違いがあります。インサイドセールスの役割としては、顧客のニーズや課題をヒアリングし、顧客に役立つ情報を提供して中長期的に信頼関係を構築しながら購買意欲や受注確度を高めていくことがあげられます。アポ数や商談件数をKPIに設定することもありますが、あくまで売上額や受注数の向上が重要です。
一方でテレアポは、いかに架電数を増やしてアポをとるかを重視するため、顧客との関係も短期的になることが多いでしょう。売上につなげる目的はインサイドセールスと同様ですが、アポ数や架電数をKPIと設定するため、業務の優先順位にも違いがあるといえます。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスの大きな役割は、リードナーチャリングです。リードナーチャリングとは、見込み顧客とコミュニケーションを重ねてニーズや課題を引き出し、興味や検討段階にあわせた提案によって顧客へと育成していくことです。
インサイドセールスが信頼関係を築いていくことで顧客の検討や購入タイミングを逃さずに、成約の可能性を高めることができます。見込み確度が高い顧客との商談を設定し、フィールドセールスにつなぐことがインサイドセールスの重要な役割といえるでしょう。
【原因3】適切なKPI設定ができていない
インサイドセールスがうまくいかない原因として、KPIが適切に設定できていないことがあげられます。インサイドセールスのKPIはアポ数や商談件数を重視してしまいがちですが、受注につながらないアポが増えても売上にはなりません。成果を得るためには、アポ数や商談件数とあわせて受注率や受注金額などもKPIに設定しましょう。
またアポを商談化し、受注につなげるためにはフィールドセールスなど他部署との連携が欠かせません。部分最適ではなく、事業部全体で売上を最大化できるよう、フィールドセールスの営業方針を反映させるなど、連動させながらインサイドセールスのKPIを定期的に見直す必要があります。
【原因4】見込み客の数が不十分
インサイドセールスの業務は、見込み客に対してアプローチして顧客のニーズを理解し、見込み確度を高めていきますが、見込み客の数が不十分であるとうまく機能できません。
インサイドセールスを運用して売上につなげるためには、見込み顧客のなかでも資料請求や問い合わせなど、顧客自らアクションしている「インバウンドリード」の数を確保することが特に重要となります。
インサイドセールスの種類
インサイドセールスは、大別すると以下の2つの手法があります。
種類 | 営業手法 | 概要 |
---|---|---|
SDR(Sales Development Representative) | 反響型 | 資料請求や問い合わせなど獲得したリードに対応する。顧客の関心や購入意欲が下がらないようにスピーディーな対応が重視される。 |
BDR(Business Development Representative) | 新規開拓型 | 新規顧客に対して営業する。ターゲット先を見極め、計画的にアプローチしていくことが重要。 |
SDRは、広告やセミナーなどをきっかけに資料請求や問い合わせをしてきた顧客に対してアプローチするPULL型営業です。顧客が自ら問い合わせしているため、検討や購入タイミングを失わないように迅速に対応していくことが求められます。
一方でBDRは、これまで接点がなかった顧客にアプローチするPUSH型営業です。影響力のある企業や、接点を持ちたい企業など売り込みたい企業を絞ってアプローチします。決定権を持つ担当者にアプローチするまで時間がかかるため、情報を集めて計画的に営業する必要があるでしょう。
インサイドセールスの稼働率を上げる
見込み客の数が不足している場合は、マーケティングを強化してインバウンドリードを増やす取り組みをおこない、またSDRとBDRを組み合わせて稼働率が向上するように対策しましょう。
ただしそれぞれの業務を強化するにはリソースが限られてしまうため、営業全体を統括する事業責任者が事業の置かれている状況を踏まえて、柔軟にリソース配分しなければいけません。
【原因5】マーケティングやフィールドセールスとの情報共有・連携不足
インサイドセールスがうまく機能しない要因として、営業フローの設計ができていなかったり、マーケティングやフィールドセールスとの情報共有や連携が不足していたりする可能性があげられます。
リードの受け渡しタイミングなど業務のすみ分けや情報共有する環境が整っていないと認識のすり合わせができず、軋轢が生まれやすくなります。その結果、業務効率の低下や受注率の低下にもつながってしまいます。
受注率や売上を向上させるためには、マーケティングとフィールドセールスとの連携を強化し、目的や方針を共有することが必要です。連携を強めることで業務の効率化も見込めます。
マーケティングとの連携
マーケティングはリード獲得を担当し、インサイドセールスはマーケティングで獲得したリードを育成する部分を担っています。インサイドセールスは顧客とコミュニケーションを取る機会が多く、顧客ニーズや課題を把握しやすく情報も集まりやすいといえるでしょう。
インサイドセールスは顧客から得た情報をマーケティングに共有することで連携を強化し、マーケティング施策の改善をしながらPDCAを回していくことができます。
またMAツールを導入するとリード獲得や育成の対応を可視化できるため「リードの質が悪い」「リード対応漏れがある」といった事態を避けられます。顧客対応の情報を共有し一元管理できるので業務効率化に役立ちます。
フィールドセールスとの連携
インサイドセールスがフィールドセールスとの連携を強化し、売上につなげるためには、顧客からヒアリングした情報を漏れなくまとめて共有します。受注確度の高い顧客かを判別するときは、以下のBANT条件をフィールドセールスに伝えるようにしましょう。
【BANT条件】B:Budget(予算)A:Authority(決裁権)N:Need(必要性)T:Timeframe(導入時期) |
顧客からヒアリングしたBANT条件をフィールドセールスに情報共有する際には、SFAやCRMツールを利用すると連携がスムーズになります。営業対応の状況を共有できるので、情報の伝え忘れを防ぎ、適切なタイミングで顧客にアプローチできるようになります。
【原因6】ツールがうまく使えていない
インサイドセールスでは、顧客情報を管理するためにSFAやCRMなどのツールを利用します。顧客情報の管理ツールを使うことで顧客の検討段階や営業状況などを見える化できるため、営業活動で役立ちます。
しかし社内でツールが浸透していなかったり、機能を使いこなせていなかったりすることも少なくありません。ツールは初期費用や月額利用料が掛かるため、仮に同業他社から成功事例を聞いたとしても安易に導入せずに自社に必要な機能があるのか、また費用対効果などを調査した上で導入しましょう。
ツール選定で迷う場合は、自社のビジネスを理解している有識者にアドバイスをもらうのも1つの手です。またツールが社内で浸透するように使い方の講習会の開催や、エバンジェリストの設置を検討するとよいでしょう。
【原因7】教育やノウハウの情報共有不足
インサイドセールスを継続していくためには、個々がスキルアップするための教育体制やノウハウの共有が欠かせません。営業が属人化してしまい、対応の質に差が出てしまうと成果が上がらず、インサイドセールスが育たないでしょう。
営業能力の高い担当者のノウハウの共有で全体を底上げし、メンタルケアによってモチベーション低下を防ぐなど、インサイドセールスを育成する体制が必要です。
トークスクリプトの活用
リード獲得時の顧客対応は、信頼関係がうまく築けるか、顧客の課題を聞き出せるかなど今後の対応を左右します。「顧客の課題をうまく聞き出せない」など、ヒアリングは担当者によって対応の差が出やすいものです。
そのため、どのように顧客にヒアリングすればよいのか事前に顧客の返答内容を想定して、営業のトークスクリプトを作成しておくとよいでしょう。トークスクリプトを使ってロールプレイングをおこなうことで、インサイドセールスの経験の差を埋めることも可能です。また、担当者につないでもらいたいときや製品やサービスの紹介、アポの設定など状況にあわせて、いくつかトークスクリプトのパターンを用意しておくと落ち着いて対応できます。
メンタルケアをこまめに
インサイドセールスは企業に導入され始めてから日が浅いため、人材育成の環境や体制が確立できていない傾向があります。インサイドセールスは、顧客とコミュニケーションを取る機会が多く、ときには営業がうまくいかず断られてしまうことも少なくありません。またマーケティングとフィールドセールスをつなぐ役割のため、インサイドセールスが直接受注する機会がなく、業務で成果を実感しにくい職種といえます。
業務を通してスキルアップや達成感が得られないとモチベーション低下につながってしまいます。定期的に面談を実施して担当者のキャリア相談やコーチングなど、フォローする機会を設けるようにしましょう。
【原因8】全体の管理者がいない
インサイドセールスで成果を上げるためには、インサイドセールスのほかにもフィールドセールスなど営業活動全体を把握して管理できる事業責任者が必要です。インサイドセールスを導入すると分業化して業務に取り組むため、本来の目的を見失ってしまい、属している組織のKPIの達成のみを追ってしまいがちです。インサイドセールスとフィールドセールス、マーケティングをうまくつなぐことができないと軋轢が生まれる可能性があるため、営業活動を俯瞰で見て管理できる人材が欠かせないでしょう。
たとえば、弊社が以前営業支援した業務系SaaS企業では、インサイドセールスを設置していたものの、CS担当によってシステム導入をしていたためリソースが不足しており、組織が疲弊していました。そこでインサイドセールス導入のスキルセットを持つ人材を兼任することを提案しました。効率性が低下するデメリットはあったものの、事業責任者が施策のメリットやデメリットを意識しながら、その時々に必要な対策をとっていく意識を持つことでうまく運用できるようになりました。
従業員が成果を発揮しやすい組織を作っていくために、形にとらわれず、柔軟に対応する意識も重要です。
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まとめ
インサイドセールスを導入すると、営業活動を分業化して効率を上げたり、顧客の検討や購入タイミングを逃さずにアプローチしたりすることができます。
しかし、インサイドセールスの導入目的が明確化できておらず、マーケティングやフィールドセールスとの連携がうまく取れていないとメリットを活かしきれません。
インサイドセールスの役割を浸透させ、各部署と情報共有してインサイドセールスが機能する体制を整えて受注率や売上向上につなげましょう。
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