長年、請負ビジネスで成功を収めてきた企業にとって、ビジネスモデルの転換は大きな挑戦です。しかし、人口減少社会における市場環境の急速な変化や顧客ニーズの多様化に伴い、従来の請負型ビジネスだけでは持続的な成長が困難になっています。そこで注目されているのが、サブスクリプション型のビジネスモデルです。
多くの企業で請負ビジネスの脱却を目指して新規事業として、自社ビジネスのサービス化の検討が増えてきました。一方で、「既存ビジネスがある中でどう進めてよいかわからない」「企画はするものの、周囲の理解が進まず企画倒れになる」といった声を多く寄せられています。
サブスクリプションモデルは、定期的な収益を生み出し、顧客との長期的な関係構築の必然性を高め可能にしたモデルです。これにより、収益の安定化と予測可能性の向上が期待できます。さらに、継続的なサービス提供を通じて、顧客ニーズの深い理解と、それに基づく製品・サービスの改善が可能となり、競争優位性の確立にもつながるモデルです。
しかし、サブスクリプションモデルへの移行は単純ではありません。特にサブスクリプションビジネスは売上は積み上がっていくものの時間を要するため、赤字で推進していく必要があったり、既存のビジネスに対して売上は小さいものになるため利害関係者の理解を得ながら進めていく必要があります。
そのため成功には、適切な戦略と推進が不可欠です。本記事では、請負ビジネスからサブスクリプション型の新サービスを立ち上げる際に固めておくべきコンセプトに役立つ3つのフレームワークを紹介します。
これらの型を理解し、既存の資産やマーケティングステップ、市場ニーズをシンプルに整理することで利害関係者との調整・事業推進がしやすくなります。個人情報の入力なしでダウンロードできるテンプレート(ppt形式)を用意しましたので、コピーなどしてぜひご活用ください。
新サービス・新規事業の企画・推進に役立つ3つの型
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TimeSkipでは、「請負ビジネスを脱却したい」「新規事業の企画を推進したい」企業様を支援しています。お困りの方はお気軽にご相談ください。数回の無料相談を実施しています。
目次
新サービスの企画時によくある課題
新サービスの企画に関するお悩みの例
- 請負(受託)ビジネスしか経験がなくどう進めたらいいかわからない
- 新しい事業に関する、スキルをもった人材をどう確保していいかわからない
- 既存の組織のサポートを得られず障害となっている
- そもそも、市場ニーズや競合状況を把握するのにリソースを避くのがむつかしい
このようなお悩みは、既存のビジネスや組織がある中で新しいサービスを立ち上げる際には解消が必要となってくる課題となります。
ここからは、とくに企画の初期段階で必要となるメンバーのアサインや利害関係者との調整する場面を想定して、新サービスのコンセプトを固めながら周囲の理解を得ることに特化した実用的なテンプレートの活用方法を解説します。
新サービス企画に使える3つのテンプレート
実際に既存事業がある中で新サービスを企画するためにはシンプルなコンセプトで周囲の理解を得ながらの推進が必要です。ここでは、3つのテンプレートについて解説します。
- 誰に・何を・どのように
- S・N・H・S
- 新規事業検討キャンパス
1.「誰に・何を・どのように」を書き出す
事業新規事業のアイデア出し方にはたくさんのフレームワークや手法が提唱されています。孫正義氏の「強制連想法」や「オズボーンのチェックリスト」、どれも有効ですが、最も基礎的ですぐに使え、シンプルに思考が整理できるフレームワークは「誰に・何を・どのように」と考えています。
新サービスの推進では、既存顧客リストやノウハウ等の無形資産、マーケットの変化、経営層の思いなど沢山の個別の事情があります。
しっくりくるものが出てくるまで、たくさん書き起こしてみてください。ただし、この段階で100点を取ろうとしない心構えがポイントです。
この事業コンセプトは推進に値しないと判断されたらアウトのため、あくまで周囲の理解を得るものである必要があります。後にブラッシュアップすることを前提とします。
ここでは以下2点を特に注意して考えてみてください。
- 「誰に」=ターゲット
- 「何を」=価値
- 「どのように」=商品
「どのように」はリスティング広告で集客し商談するなどの届け方ではありません。また「何を」は商品ではなく受け取って欲しい価値です。
順番は
- 「誰に(理想の顧客)」
- 「何を(価値)」
- 「どのように(商品)」
「誰に」が変わると「受け取る価値」も変わるため先に「誰に」を想定する必要があります。売りたい商品があり、欲しがる人を探す逆ルートをたどってしまうと価値をうまく伝えることできず、なかなか売れないという状況になってしまうので要注意です。
「誰に・何を・どのように」を決めるにあたってヒントになるのが「誰に・何を・どのようにを考えるコツ」です。
「誰に・何を・どのように」を考えるコツ
「誰に・何を・どのように」を考える際、落ち入り安い罠として、自社の資産を利用しないでアイデアを出してしまい、強みが活かせず企画倒れしてしまうという事があります。
今までと違う顧客に新しい製品を世の中に出していくという事はワクワクしますし、実行してみたい気持ちはわかりますが、とても難易度が高いこともあわせて理解しておくことが大切です。
新規事業のアイデアを出す時は下の図の『難易度 中』である「既存の商品のターゲット顧客を変える」か「既存顧客に新商品を販売する」かのどちらかを強くおすすめします。
「既存の商品のターゲット顧客を変える」場合は、「変わった使い方をしている顧客」などに注目してみると新たなターゲットの気づきが得られます。
また、「既存顧客に新商品を販売する」場合は、「実際に既存の顧客からでた問い合わせ」や要望やクレームなどから発想を得ることで現実的な企画を練ることができます。
2.S・N・H・Sを仮説で作成してみよう
新規事業を考える際に合わせて、想定しておきたいのが集客導線です。集客導線の仮説をもっておくことで、事業計画書の作成などにも役立てることができ利害関係者に対して実行可能性について説明しやすくなります。
S・N・H・Sは知ってもう(S)、仲良くなる(N)、ホットにする(H)、商談する(S)の略です。(※当社の呼び方です)
マーケティング活動において、知ってもらう(S)活動を増やしがちです。俯瞰して想定している施策をS・N・H・Sに落とし込み以下の観点で確認し、営業やマーケティングにかかるコストの想定や効率のよい活動の計画づくりに役立てましょう。
作成する際は、以下の観点で検討しながら記載するのがおすすめです。
- 各フェーズごとに想定しているチャネルおよび施策は記載可能ですか?
- 効率よく商談に繋がりそうな導線はどこですか?(それはなぜですか?)
- 各フェーズごとに提供するコンテンツにはどのようなものがありますか?
- 欲しい受注件数から逆算して必要な「S:商談数」や「S:知ってもらう」ための件数は想定できそうですか?
- 必要な商談獲得にかかるマーケティングコストはどの程度になりそうですか?
当社の支援先で意外にもよくありがちなのが、自社のホームページやサービスサイトを「S:知ってもらう」施策として捉えているケースです。ホームページやサービスサイトは、置いておけば知ってもらえるものではないため注意が必要です。
3.新規事業検討キャンパスを描こう
最後のテンプレートは、「新規事業検討キャンバス」です。このテンプレートは、集客導線を含めたかたちで新規事業を検討するのに役立つシートです。アッシュ・マウリャ著「Runnnig Lean」で説明している「リーンキャンバス」をベースに当社で手を加えたものです。新規事業検討時に振り返りながら常時更新しましょう。
新規事業を着手する場合、手始めに事業計画書に手をつけてしまうと、アイデアの検証よりも作成に手が取られてしまい作成に数週間から場合によっては数ヶ月もかかります。この検討シートは項目も限られているため数時間でアイデア出しをする際に適しています。
スライド1枚で収まるように出来ており、記載の面積も限られているため本質を抽出し、要点をシンプルに言葉で伝えられるようになります。
また、顧客の課題に焦点があたるように構成されているため、技術や製品ではなく、顧客の課題起点でサービスや届け方を検討できるように考え方をアップデートしていけます。
この「新規事業検討キャンバス」は、1ページのため共有がとても簡単です。検討や検証、利害関係者の意見が活性化されていくにつれて簡単に振り返り・更新をすることが可能です。
社内の協力を得るための作成後のアクション
各種テンプレートは作って終わりではなく、都度アップデートしていくことが重要です。利害関係者からの意見を取り入れ都度改善し共有していくことが、新サービスの企画の理解を得て、協力を得るために不可欠です。
ここからは、初版が出来たら必ずやってほしいアクションやコミュニケーションの戦略を解説します。
1.声に出して何度も読む
テンプレートが完成したら、まず自分自身が声に出して何度も読んでみましょう。違和感や引っ掛かりがないか、冗長でないかを確認します。
問題がなければ、まずは比較的話しがしやすく社内でも信頼されている関係者に展開しましょう。新サービスの背景や目的を説明することが大切です。その上で、企画について意見を求めましょう。
2.関係者と1on1を実施する
関係者からの協力を得るために、個別の意見やアイデアを収集しましょう。プロジェクトの成功が関係者や関係者の所属するチームにとってどのような成果につながるかを示すことが大切です。
3.定期的なミーティングを開催する
関係者との定期的なコミュニケーションの場を設定し、企画の進捗状況を共有しましょう。チーム組成を計りながら企画をブラッシュアップしていきます。経営層とのコンセンサスも定期的にとりながら進めることで、プロジェクトの推進力を得ることができます。
自らが率先して行動し、意見を取り入れた結果を共有することを繰り返し積み重ねていくことで、周囲の信頼と協力を得やすくなります。粘り強く取り組むことで、新規事業の成功につながる協力体制を構築できるでしょう。
おわりに
新サービスを立ち上げ、推進し成果を出すためには、周囲の協力が不可欠です。これらのテンプレートは1枚ずつのシンプルなものですが奥が深くプロジェクトが進むにつれて大いに活躍してくれることでしょう。
まずは、100点を求めずとにかく作って進めていくことが大切です。
このテンプレートを活用し、周囲の協力が得られている段階までいけば、損益計画、事業計画への落とし込みも効率的に進めることができます。
多くの場合、企画がゆるい状態で、周囲の協力を得ずに事業計画書の作成に着手してしまい企画からやり直しになってしまうということがあります。
一度、活用してみてはいかがでしょうか。
新サービス・新規事業の企画・推進に役立つ3つの型
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