近年SaaSビジネスなどのサブスクリプションモデルの浸透に伴い、カスタマーサクセスが注目されています。
SaaS事業においては、いかに顧客の解約率を削減し、継続的にサービスを利用してもらうかがビジネスの成功において最も重要です。
これらを支えるカスタマーサクセス部門の立ち上げを検討している方に向けて、立ち上げの手順と成功に必要なポイントをわかりやすく解説します。
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目次
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスの役割は、上記のような分業型の営業プロセスの最終段階を担い、顧客満足度の向上によりLTVを最大化させることです。
このような営業の全プロセス(顧客の開拓から受注後まで)を、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部門に分業化し、それぞれが連携しあうことで営業成果・効率を上げる分業型の営業プロセスは『The Model』型と呼ばれています。
セールスフォース日本法人の成長を牽引した福田氏が「THE MODEL」という著書にまとめたものが話題となり、日本でも急速に普及しました。
この体制を構築していくことで、個々がそれぞれの専門性を高められるなど多くのメリットがあります。
なぜカスタマーサクセスが注目されるのか
SaaS事業では顧客が自社プロダクトを購入した時点では、顧客獲得にかけた費用(CAC=Customer Acquisition Cost)を、回収できないのが一般的です。
CACを吸収し、収益につなげるためには顧客にできるだけ長く継続利用してもらうことが最も重要になります。
そのためには、プロダクトの良さを理解してもらうと同時に、顧客に成功体験を与え「使ってよかった」と思ってもらわなければなりません。
それらをサポートするカスタマーサクセスは事業の収益を担う重要な役割なのです。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスと混同されやすいサポートの違いについて説明します。
カスタマーサポートは顧客に問題が発生した時に一時的な対応をする機能です。
基本的に売上に貢献しません。
カスタマーサクセスは、問題の発生自体を未然に防ぐよう能動的に行動し、顧客を成功へ導きます。
継続的・長期的な関係を構築し、継続利用してもらうことでLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)が向上するのです。
売上に大きく貢献する点がカスタマーサポートとの違いでもあります。
カスタマーサクセスの目的
カスタマーサクセス部門の目的は一言でいうと顧客を成功に導き、LTVを最大化させる事です。
以下の5つの視点から解説します。
- LTV最大化
- 継続率の維持
- 顧客満足度向上
- 利用拡大(アップセル・クロスセル)
- 顧客の理解・製品の改善
①LTV最大化
LTVとは、Life time Valueの略称であり、日本語で「顧客生涯価値」と呼ばれます。
取引を開始してから終了するまでの間に、自社にどれだけの利益をもたらすのか、その総額を表す指標です。
サービス提供者にとっては最も重要なKPIの一つになります。
②継続率の維持(解約率の減少)
LTVに関連する項目として、既存契約の維持(リテンション)の向上があります。
カスタマーサクセスの担当者は、LTVを最大化させるためにどれだけ契約期間を維持できるか、また解約率を減少させられるかという点にも積極的な取り組みが必要です。
担当者の支援に顧客が満足していなければ、契約が更新されずに、解約率が上がってしまうでしょう。
平均契約期間は上記スライドのように1÷解約率で計算できます。SaaS事業を推進する上で、重要な計算式となるなため関係を理解しておきましょう。
③顧客満足度向上
カスタマーサクセスは、顧客のビジネス成功を目指して活動します。まずは、顧客のことをカスタマーサクセス担当者は深く理解する必要があるでしょう。
そのうえで、顧客の成功を定義づけして、ビジネスの成功状態を正しく把握し、日々の活動に落としこまなければなりません。業務系のSaaSでは、既存業務があるためオンボーディングの難易度が高い分定着してしまえば長く使ってもらえるという特徴があります。
この定着までの期間をオンボーディングと呼び、オンボーディングには何が必要なのかを定義づけする事が重要です。
④利用拡大(アップセル・クロスセル)
LTVの構成要素になります。顧客がカスタマーサクセスの支援内容に満足し、それによってビジネスの成功が継続すると、顧客のロイヤルティはさらに高まっていきます。
アップセル・クロスセル活動にもつながるでしょう。アップセル、クロスセルがうまくいくと客単価の向上につながりLTVが高まります。結果として、事業全体で営業やマーケティングにかける費用の増大につながります。
⑤顧客理解、製品の改善
顧客の成功のために顧客と伴走しているカスタマーサクセス担当者は、顧客の声を一番近いところで聞ける存在です。
サービス開発者に貴重な顧客の声を伝え、改善や新規サービスの開発につなげられます。
カスタマーサクセスのフェーズごとの役割
カスタマーサクセスの目的を達成するため、フェーズごとに主な役割が4つあります。
- オンボーディング(導入支援)
- アダプション(定着活用支援)
- エクスパンション(更新、アップセルクロスセル活動)
- プロダクトフィードバック(サービス改善、新機能提案)
①オンボーディング
オンボーディングとは顧客が実際に契約した後、社内に導入していくフェーズです。
カスタマーサクセスチームが、フィールドセールスから引き継ぎを行い、顧客の利用定着を促すために支援を行います。
具体的には顧客と共に、自社サービスを利用して目指すゴールとそのゴール到達のための課題を整理し、認識合わせを行います。
その後、整理した項目に従って、導入のためのステップとスケジュールを作成します。
解約率を減少させるためには、契約後、顧客の自社サービス利用への熱量が高いうちに、このオンボーディングを完了させることが重要です。
②アダプション
アダプションとは導入後に本格的にサービスを運用・活用し、定着を行っていくフェーズです。
自社サービスが顧客の業務で活用され、定常的に利用され続けることは、継続利用率を維持・向上させるために重要です。また、活用が促進されれば、アップセルに繋がる可能性も高まります。
アダプションにおいては、顧客の自社サービスの活用度をヒアリングやデータを元にして継続的に確認し、顧客の成功に繋がる活用方法を提案します。
セミナーの実施や顧客の活用事例の紹介なども効果的です。
③エクスパンション
エクスパンションとは顧客の自社サービスの活用をさらに拡大するフェーズです。
契約の更新や、顧客の利用単価を上げるためのアップセル・クロスセルがこのフェーズに含まれます。
サブスクリプション型のサービスでは、初期導入コストを抑えているため、売上や利益を継続的に維持・拡大していくためにエクスパンションを積極的に狙っていく必要があります。
エクスパンションのためには、顧客において自社サービスの利用が定着しており、活用されているのが前提条件です。
また、カスタマーサクセスチームも、顧客のゴールや活用度を理解できていなければ、適切な提案ができません。
そのため、オンボーディングとアダプションをしっかりと行うことが求められます。
④プロダクトフィードバック
プロダクトフィードバックとは顧客のニーズを理解して次の段階への橋渡しを行うフェーズです。
顧客に継続で利用してもらい、顧客の満足度を上げる為には、不具合を直して、顧客の声に耳を傾けて改善を行っていく必要があります。
フィードバックは、満足度の向上に寄与して、既存顧客の継続利用に繋がります。
そして、顧客の声からの改善点などは他の利用者にも知れ渡り、新規顧客の獲得にも繋がっていくでしょう。
改善の為にはPDCAを回す必要があります。
上記のフローがしっかり機能すればよりプロダクトは良くなっていき、常に新しい付加価値を顧客に提供できるでしょう。
さらにサービス離脱も起きず、自然と事業がスケールしていくのです。
CSの人件費は原価?それとも販管費?
上記のようにカスタマーサクセスの担当の役割はプロダクトによって様々です。
カスタタマーサクセスの担当の人件費が売上原価なのか、それとも販売管理費なのかは考え方も企業によりばらつきがあります。
当社の考え方は、PMF(プロダクトマーケットフィット)前はマーケット調整のためにかかっている状態のため販売管理費扱いとし、PMF後は維持コストと捉え会計的にサーバーと似た扱いとし、売上原価とするのが良いと考えています。
PMF後について正確には、オンボーディング担当は売上原価扱いとなり、エクスパンション担当は販売管理費とするのが適切と考えています。
カスタマーサクセスの組織モデル
カスタマーサクセスの組織にはベースとなるモデルがあるのです。
自社の事業フェーズや商品の複雑度に応じて適した組織を選択する必要があります。
- オールラウンダー型
- セールス指向型
- 伴走型
- スペシャリスト型
それでは1つずつ解説していきます。
オールラウンダー型
オールラウンダー型とは、カスタマーサクセスが、以下の作業にマルチな対応をする組織モデルです。
- セールス
- オンボーディング
- トレーニング
- サポート
- 契約更新
- アップセル
- 口コミ紹介の管理など
カスタマーサクセスを立ち上げたばかりの企業や事業の規模が小さいスタートアップ企業などによく見られます。
オールラウンダー型は、カスタマーサクセスが事業の中心となるため、チャーン(解約)率の大幅に低下できる点がメリットです。
たとえば、セールスがノルマの達成だけを目的に、自社に適していないような顧客を集めるとチャーン率は上昇しますが、オールラウンダー型ではセールスもカスタマーサクセスが行うため、チャーン率は低く抑えられます。
一方、カスタマーサクセスの業務負担が大きくなる点はデメリットです。
顧客基盤の拡大につれて、新たな人材を雇うもしくは他の組織モデルに移行しなければ、適切な顧客対応は難しくなるでしょう。
セールス指向型
セールス指向型とは、カスタマーサクセスがセールスと密に連携を取りながら業務を進める組織モデルです。
カスタマーサクセスとセールスがしっかり連携を取ることで、顧客にあう製品販売、最適なタイミングでのアップセル/クロスセルの提案などが可能になります。
取り扱い製品が複雑ではない企業や顧客数が少ない企業でよく見られる型です。
伴走型
伴走型とは、カスタマーサクセスが顧客と伴走形式で支援する組織モデルです。
強みは、カスタマーサクセスが伴走するため、顧客の課題を先回りして解決できる点です。
また、顧客状態を正確に把握できるので、アップセル/クロスセルの成功確率も上がります。
伴走型は顧客数が少ないながらも、1社当たりの顧客単価の高いハイタッチ層(後述)が多い企業に向いています。
もしくは、ある程度のハイタッチ層がいるならば、スペシャリスト型にハイタッチ専用チームを作るといいでしょう。
スペシャリスト型
スペシャリスト型とは、カスタマーサクセス部門内にオンボーディングチーム、セールスチームやテックタッチチームなどの専門のチームを構築する組織モデルです。
スペシャリスト型を採用すれば、各チームそれぞれの業務に注力できるので、顧客に最適な支援を提供できる可能性が高くなります。
また、各メンバーの業務負担の軽減にもつながるでしょう。
デメリットとしては、チーム間の連携がスムーズでなければ、顧客の対応に遅れが生じ、チャーンの増加を招いてしまう可能性があることです。
また、十分な数のカスタマーサクセス人材を集めなければ、スペシャリスト型の導入は困難といえます。
組織モデルの選び方
自社の事業フェーズや商品の複雑度によって適した組織モデルを選択する必要があります。
適切な組織モデルを構築していくことで、カスタマーサクセスの役割を果たせるでしょう。
カスタマーサクセス立ち上げの手順
カスタマーサクセスの手順は以下の流れで1つずつ解説していきます。
- カスタマージャーニーを作成し、顧客の成功を正しく理解する。
- 組織モデルの検討、役割の定義
- タッチポイントを定義し、顧客をセグメントで分ける
- KPI設定
- 人材の確保
- ツールの導入
①カスタマージャーニーマップにより、顧客の成功を正しく理解する。
カスタマージャーニーマップを作成し顧客の一連の製品体験やサービス体験を可視化します。
カスタマージャーニーマップにより、顧客の事業環境やニーズ・課題を的確に理解し、導入前・検討中・導入後・契約更新などそれぞれのフェーズにおける顧客の心理を把握できるのです。
そうすることで、顧客の成功とは何なのか解像度が高くなり、深い理解ができます。
②組織モデルの検討、役割を定義する。
自社に適した組織モデルを選択し、他部門との役割分担と、カスタマーサクセス組織に設置する機能(役割)を検討します。
カスタマーサクセスに必要な機能(役割)は以下のようなものがあります。
- COO(Chief Operating Officer)
- カスタマーサクセス組織全体のマネジメントや経営レベルでの判断を行います。
- CSM(Customer Success Manager)
- 顧客アカウントごとのマネジメントを行います。
- オンボーディング
- 新規顧客に対してトレーニングや教育を行います。
- 運用/コンサルティング
- 積極的な提案で活用を促進します。
- 契約更新/アップセル・クロスセル
- 顧客の契約更新やアップセル・クロスセルを目指して提案や交渉を行います。
- テックタッチ
- デジタルツールやサイトなどを活用して支援を行います。
- Opsイネーブルメント
- 部署内のパフォーマンスや効率性向上のために設計やツール導入などを行います。
このように様々な役割がありますが、自社のカスタマーサクセスに必要な機能を理解し、まずは少人数からでも足元の支援を進めましょう。
少しずつ型作りや効率化に取り組んでいき、最終的にチームとして機能できるようにしていきます。
③タッチポイントを定義し、顧客をセグメントで分ける
カスタマーサクセスでは顧客との距離感に応じて以下の3つのタッチモデルに分類し、アプローチ方法を最適化するのが一般的です。
・ハイタッチ
ハイタッチは、契約初期段階にあるユーザーのうち「大口顧客」に対する1対1の個別サポートを指します。
自社に多くの利益をもたらしてくれる顧客に、時間・コストをかけて手厚くサポートを行うのが特徴です。
この場合は活用に向けた個別の目標設定や定期的な進捗確認、機能のカスタマイズなどの情報を提供し、コンサルティングに近いサービスを行います。
勤怠管理SaaSや経理業務で利用するSaaSなど業務系のSaaSでは導入難易度が高いためハイタッチでの導入が多い傾向があります。
・ロータッチ
ロータッチは、ハイタッチほど導入費用が高くないユーザーに対して、1対多数(セミナーや勉強会)で支援し、必要に応じて個別対応を行うサポートを指します。
ロータッチ客への対応は、Webコンテンツやメールなどのコンテンツ提供によるサポートと個別対応を組み合わせて行うのが特徴です。
・テックタッチ
テックタッチは、費用をかけずに、システムやITテクノロジーを活用して行うサポートを指します。
テックタッチは最もユーザー数が多く、個別対応が難しいため、テクノロジーの力を借りて行うのが特徴です。
この場合はWebサイト上に学習ガイドやチュートリアルなどのコンテンツや、メルマガなどで自習してもらうための情報を提供して、ユーザーをサポートします。
④KPIを設定する
カスタマーサクセスで設定されるKPIは、以下のようなものがあります。
チャーンレート(解約率) | 既存顧客が製品サービスを解約する割合。チャーンレートが悪ければ、既存顧客を維持できないないことを意味するため、多くの新規顧客を獲得できていたとしても、事業の成長にはつながらない。 |
リテンションレート(維持率) | 製品サービスを継続して利用する顧客の割合チャーンレートと同様、既存顧客の継続を表す重要な指標。 |
アップセル/クロスセル率 | アップセルとは既存顧客に上位製品へアップグレードしてもらうこと、クロスセルとは関連製品を購入してもらうこと。 |
オンボーディング完了率 | オンボーディング完了とは、サービスを導入し、活用に慣れてもらったりするなど、継続利用が見込める状態になっていること。この状態になっている顧客の割合のこと。 |
NPS(ネットプロモータースコア) | 顧客が自社製品をどれだけ気に入っているのかどうかを数値化した指標。顧客に自社製品を同僚や友人に推奨する度合いを10段階で評価してもらい、回答を下記の通りセグメント分けをする。9~10点:推奨者7~8点:中立者0~6点:批判者推奨者の割合から批判者の割合を引いた数がNPS |
ヘルススコア | 顧客が自社製品を継続利用するかどうかをスコア化した指標。製品の利用状況や定着率、問い合わせ回数などの複数要素を基に算出する。ヘルススコアを見ることで、顧客の将来的な行動(更新や解約など)を把握できるため、チャーン率と同じくらい重要な指標。 |
指標については以下の記事も参照ください。
「SaaS業界におけるチャーンレート(解約率)の平均と目安とは?計算方法や改善策も解説」
「カスタマーサクセスで直面する課題と解決策は?LTVやヘルススコアの考え方を含めて解説」
「SaaSの売上継続率(NRR)とは?目安と改善方法についても詳しく解説」
「【徹底解説】SaaS企業のLTVとCAC、ユニットエコノミクスの計算方法」
⑤人材の確保
カスタマーサクセスに必要な人材の確保も必要です。
カスタマーサクセスに必要なスキルは次のようなものが挙げられます。
- 関係構築スキル
- 情報分析スキル
- 問題解決スキル
カスタマーサクセス実現のためには顧客と定期的に折衝をすることが必要であるため、顧客と中長期的に良好な関係を築けるスキルが必要です。
顧客のサポートや営業経験があれば、より効率よく業務を進められるでしょう。
また、データを分析して顧客の状況を見極め、目指す方向へ導くための情報分析スキルやプロジェクトマネジメント能力も必要です。
顧客の課題や期待値を理解して必要な情報を収集し、問題解決のための提案力も求められます。
⑥ツールの検討
カスタマーサクセスに必要なツールを導入し、効率化を図ることも必要です。
適切なツールを導入することで以下のようなことが可能となります。
- 顧客の状況の把握
- コミュニティの構築
- 問合せ対応の効率化
- 利用方法のガイド
ツールの導入にあたっては、このような目的を明確にした上で自社の状況に合わせて検討しましょう。
カスタマーサクセス立ち上げを成功させるポイント
カスタマーサクセスを立ち上げ、目標とする成果を上げるためには以下6つの点が重要なポイントになります。
- 全社として取り組む
- 顧客データの活用
- 顧客の成功を意識する
- 顧客の声を鵜呑みにしない、真のニーズを汲みとる
- はじめから完璧を求めずやりながら修正する
- ノウハウが溜まったら標準化を図り、属人性を排除する
①全社として取り組む
カスタマーサクセスは営業や開発、経営サイドまで、さまざまな部署との連携、フォローが必要です。
その際に、KPIやアクションプランなどの情報を全体的に共有することでスムーズな連携が可能となります。
カスタマーサクセスでは、日ごろから綿密に、他部署のメンバーと情報共有をし合い、目線をそろえておくことが大切です。
②顧客データの活用
顧客の成功を共に目指すには、顧客への理解を深めなければなりません。
そこで重要なのが、顧客データの収集・管理・分析です。
データ分析することで、定量的な情報や、そこから考えられる潜在的なニーズ・課題などを把握できます。
自社のCRM(顧客管理ツール)等の顧客情報や、DMP(データ マネジメント プラットフォーム)等から提供される顧客データをもとにして、顧客像の解像度が高いカスタマーサクセスを目指しましょう。
また、上記のようなデータを全社員が必要な時に有効に活用できる、データドリブンな環境を構築することでより効率的に施策が行えます。
③顧客の成功を意識する
カスタマーサクセスを成功させるうえで、「どういう状態であれば、顧客は成功しているといえるのか」を定義づけることはとても重要です。
向かう先も見えずに、ただただ支援を行っているようでは、顧客が今成功しているかどうか、わからなくなってしまうでしょう。
これはカスタマーサクセスを導入して期間が浅い組織に起こりがちなよくある失敗例です。
カスタマーサクセスをこれから導入する組織は、このような状況に陥らないよう注意しましょう。
④顧客の声を鵜呑みにしない、真のニーズを汲みとる
顧客を獲得するためには、当然ですがターゲット顧客のニーズを満たす製品・サービスの開発・改善を行うことが不可欠です。
顧客の声には、企業側が気付いていない顧客のニーズや不満が含まれています。
特定の機能や対応への改善要望やクレームなどは、わかりやすい例です。
ただし、重要なのは明示的な顧客の要望ばかりではありません。
顧客から多く集まった問い合わせや評価データを分析して傾向を捉えることで、真のニーズを包括的に汲みとることも重要です。
⑤はじめから完璧を求めずやりながら修正する
立ち上げのフェーズは、計画の通りにはいかないことがほとんどです。
入念な準備や知識のインプット、経験者からのアドバイスなど事前にできることは多くありますが、それらがすべてうまく機能することはごく稀です。
したがって、組織の立ち上げに際しては完璧を目指すのではなく、失敗は当たり前のスタンスで取り組むと良いでしょう。
最初から完璧を目指したために、一度の失敗で計画が大きく変わり、チャレンジを恐れてしまうことは避けるべきです。
組織立ち上げ後は、少しずつでも前に進み、50−60%ほど計画通りにいけば「順調である」という姿勢で進めていきましょう。
⑥ノウハウが溜まったら標準化を図り、属人性を排除する
可視化できたマニュアル、業務フロー、業務遂行上のノウハウは組織全体のナレッジとして蓄積し、部署内で共有することが重要です。
ただし、業務の忙しさから自分の経験や知識をアウトプットする手間がわずらわしいと思ったり、「自分の経験はあまり役に立たない」と遠慮がちになったりと、ノウハウの共有が思った通りに進まないこともあります。
ノウハウの共有を促すためには目的やメリットを伝えたり、ノウハウを共有したことに対してインセンティブを与えることが有効な手段です。
とくに、今までナレッジ化をしていなかった場合はナレッジ化を継続し、定着させるための工夫が必要でしょう。
また、ナレッジ化の方法や蓄積されてきたナレッジの参照方法がわかりにくいと、次第に形骸化してしまう懸念があります。
共有や活用の手順はわかりやすくマニュアル化しておくとよいでしょう。
その際には、専用システムやツールを導入するなどの対策も効果的です。
カスタマーサクセス立ち上げの事例
カスタマーサクセスの立ち上げのポイントをいくら事業責任者が熟知していても、必ずしもうまくいくとは限りません。
課題は企業ごとに異なりますが、事例のストックを増やすことで何かしらのヒントが得られるかもしれません。
ここでは弊社のコンサルティング事例を2件紹介します。
事例①:不動産会社(株式会社ウチダレック様)の賃貸管理SaaSにおける事例
不動産賃貸管理を支援するSaaSシステムのカスタマーサクセス部門において、専門性の高いオンボーディング業務を行う担当者への業務負荷の増大と属人化が問題になっていました。
そこでハイタッチが必要なオンボーディング業務を対象に、弊社Timeskipのメソッドを用いて課題の解決に取り組みました。
特に下記の2点に注力し、特定の担当者への業務負荷の低減、属人化の解消・生産性の向上を目指しました。
・業務の可視化
・体系化
具体的にはウチダレック様で実施されていた導入支援の流れを1から10までヒアリングした上で、過去事例や商談を分析し、受注してからユーザーオンボーディングまでのプロセスを文書化することからスタートしました。
その結果、導入支援の実施方法がしっかり言語化され工数も明確化されました。
それらをまとめたオンボーディングプロセスの資料は3ヶ月で完成し、情報共有がしやすくなりました。
これらの取組により、カスタマーサクセス業務の難易度が下がり、専門性の高いオンボーディング業務は特定の担当者以外も対応可能な環境が構築でき、組織全体の生産性が向上しました。
不動産会社(株式会社ウチダレック様)の賃貸管理SaaSにおける事例
事例②:経理部門向けSaaS企業(株式会社アール・アンド・エー・シー様)における事例
アール・アンド・エー・シー様(以下R&AC)では、エンタープライズ向けの導入支援を行うSEが不足している状況でした。
当該業務は顧客をリードする業務知識やコミュニケーション力、ネゴシエーション力、プロジェクトマネジメント力が求められる業務であり、誰もができる領域ではありません。
一方、経験豊富なメンバーはプロジェクト対応に入っており、新入社員をフォローできる体制が未整備のままになっていました。
このような人員不足を解消するため、業務知識やプロジェクト推進経験が豊富である弊社TimeSkipにコンサルティング依頼をいただきました。
ご依頼後は、顧客とのフィット&ギャップ分析に4案件同席し、どうやったら顧客が便利に使えるか?といった観点で適宜TimeSkipの視点からアドバイスをし、R&AC様のコンサルティングをサポートいたしました。
セッションのたびに、R&AC様に対してコンサルティングの出来を外部の目線からフィードバックを実施することで、これまでの顧客と打ち合わせを重ねるたびに課題が増えていく感覚から課題を一つずつ潰していく打ち合わせに変わったと変化を実感いただきました。
今回の支援により、規模に応じた導入支援方法の整理と、ノウハウの蓄積により課題であった人員不足を解消することができました。
また、導入支援の標準化によって要件定義の期間が短くなり、利益率の改善にもつながりました。
経理部門向けSaaS企業(株式会社アール・アンド・エー・シー様)における事例
まとめ
カスタマーサクセスの立ち上げ手順と組織モデルについてポイントを重点的に解説しました。
SaaS事業で収益を上げるには、顧客にできるだけ長く継続利用してもらうことが最も重要であり、顧客へプロダクトの良さを伝え、成功体験を与えるサポート部門であるカスタマーサクセスは事業の収益を担う重要な役割です。
カスタマーサクセスの立ち上げには、全社として取り組み、各部門との連携が欠かせません。
自社の事業フェーズや商品特徴に合わせた適切な組織モデルを選択し、カスタマーサクセスの立ち上げに取り組んでいただけたら幸いです。
カスタマーサクセス立ち上げ支援、各種コンサルティングのご相談はTimeSkip社へ
カスタマーサクセス部門に関する課題の解決には、TimeSkip社にお気軽にご相談ください。
TimeSkipでは、SaaS事業社様向けの営業支援サービスを提供しています。
TimeSkipが持つメソッドでカスタマーサクセス組織の強化を実行いたします。
営業組織・カスタマーサクセス組織の構築や強化を検討されている方は、ぜひ以下よりお気軽にお問い合わせください。